第6話「Black malice」
「なんだ…こいつは?」
自らの乗機を一歩下がらせ、ゾイドハンター、アンデルは唸った。
周囲には、その急襲に一瞬で残骸とされた、自身の仲間たちの機体が
転がっている。
そして目前に立つ、たった今、狩りの真っ最中の自らのチームを
襲った黒い脅威。
「その程度か、ゾイドハンター」
黒い機体から聞こえる声。ガッ! その黒い機体の、右手の“鋏”が、
アンデルの機体の首を掴み上げた。
ギリギリ…、機体に喰いこんでいく“鋏”の刃。
「ぐっ、ぐわぁッ!」
「ひとつだけ聞く」黒い機体のパイロットが、鋭い口調で告げる。「お前ら
の同業者に、白いレドラーを使うやつは、いるか?」
★
チン…バシッ!
コンマ2秒の早業だった。
朝7時。ゴドー・スマッシュの部屋の目覚まし時計がけたたましい音を
立てる――その寸前のチン…、という第一音が鳴った刹那、ゴドー本人が
中に丸まる毛布から超高速で伸ばされる手。その指先が、狙いたがわず
目覚ましの上部のスイッチを叩いたのだ。
「…今日は俺の勝ちだ」
毛布の中で、ニヒルに呟くゴドー。再び瞳を閉じ、安らかな眠りに
入ろうとする…、
「起きんかいこのゴクツブシ!」
そのゴドーのくるまった毛布が、怒声とともに一瞬で剥ぎ取られた。
その剥ぎ取った毛布を両手で跳ね上げているのは、ゴドーの妹にて
スマッシュ運送サービスの金庫番、ティータである。
何事か!? と目を開けたゴドーの視界を、再び毛布が遮った。その
ゴドーの身体に跳びまたがるティータ。
「うお!? ――ぐげえっ!」
繰り出された容赦ない鉄拳が、毛布に包まれたゴドーの顔面にクリーン
ヒットする。
「毎日毎日グースカ二度寝しくさって、あんた働いているんでしょうが
! 真面目に勤勉に勤しむ世界中の労働者の皆さんに申し訳ないとは
思わないの!」
「痛でぇっ! あぎっ! あがが私が悪ぅございました世界中の労働者の
皆さんごめんなさいげふぅーッ!!」
剥ぎ取られた毛布に頭を包まれたまま、身体にまたがったティータに
タコ殴りにされて悲鳴を上げる。
開いた部屋のドアからその様子を見つめ、起きたばかりのアミーナが
ふわぁ、とあくびを漏らした。
★
「ホラ朝メシ! さっさと喰っちゃう!」
「おう」
「ちょっとその服何日着てんのよみっともない! ホラ着替え、ちゃんと
アイロンかけた奴着てくのよ!」
「おう」
「身だしなみぐらいきちんとしてきなさい! 顔、顔。歯ァ、歯。もお
頭ぼっさぼさじゃん! ちゃんとスプレーしていく!」
「おう」
「忘れずにハンカチにハンドタオル持ってきなさい! 顔は仕事のたびに
ちゃんと洗ってタオルで拭く! ただでさえ汗臭くなるカラダ資本仕事
なんだから!」
「おう」
「ハイお弁当。それと飲み物代。ムダ遣いなんかしたらひっぱたくからね」
「小遣いだったらもちっとよこせ」
「まとまったお金なんか渡したらすぐつまんないことに使っちゃうのは
どこの誰よ! 欲しいものがあったら貯金でもしなさい! ほら時間
なんだからさっさと出かける!」
「…いってきます」
「寄り道すんじゃないわよ! カーライルさんとこに失礼ないように
すんのよ!」
「…ケッ小姑が(ぼそっ)」
「返事は!」
「ハイ判りましたよあーもーこんちきしょー!」
★
「ティータって、いい妹だね」
「手前ぇ絶対目ン玉にウミ涌いてるだろコラ!」
上空をホバリングにて低速飛行する白いレドラー。その機体に乗る
アミーナからの、微笑混じりの通信に食ってかかるゴドー。
そのゴドーが乗ってるのは、背のハンガーに自機ゴドス改〈ガッツ〉を
載せた、キャリートータス〈ドンガメ〉である。その二機とともに荒野を
往くのは、昔馴染みの同業ゾイドハンター、ジェリー率いるカーライル
一家だ。
「あんたまたティータになんか迷惑かけたの?」自機レオブレイズ
〈ライオット〉に乗るジェリーからの、あきれたような声。「いいかげん
ティータに世話かけないようにしなさいよ。あんた今年でいくつよ?」
「こら駄目兄貴、可愛い妹を泣かせるな」
「てーかなんでこの会話だけで俺が一方的にティータ泣かしてるって話に
なって責められなきゃならんのでしょーねえっ!? 毎日毎日虐められて
泣いてるのは俺だっちゅーの!」
カーライル一家若頭、ストライクからさえ容赦なく言われ、泣いて抗議
する駄目兄貴。
「…妹に、毎日虐められて泣いてるおにいちゃん…」
ぽつり、と呟き、大爆笑するジェリー。
「…俺って、もしかしてヘタレキャラ扱い?」
悲しみにくれるおにいちゃん。
そうして今回の共同の仕事場に到着する一行。ゴドー、〈ドンガメ〉の
ハンガーから自機〈ガッツ〉を下ろし、乗り換える。その〈ガッツ〉には、
追加装備による若干の仕様変更が加えられていた。両肩には電磁ブレイカー
内臓の格闘用装甲が装備され、両腰にはこれまでの逆噴射ブースターの
替わりに、機動性向上も考慮した双方向ブースターが新たに
取り付けられている(ちなみに、前回のフォン・ツォーン絡みの仕事で、
破損した部分を改修したのである)。
「新生〈ガッツ〉、お披露目だぜ」
嬉々と、〈ガッツ〉を屹立させるゴドー。その、大地に転がりまたは
散らばっている、同業者たるゾイドハンターたちの機体の残骸。
「ひでえ…」
「アンデルのオッチャンとこのチームの成れの果てよ。幸い、死人は
出なくてチーム全員病院送りで済んだけど…」
同業者の悲惨な様子に、悔しげに唇を噛み締めるジェリー。こうして
最近、フォッシルコロニーを寝倉とするゾイドハンター達が次々と、
仕事中謎の襲撃者に襲われるという事件が多発していた。ハンター協会は、
この正体不明の襲撃者に多額の懸賞金を掛けたのである。
ゴドーとジェリーたちも、この非道な襲撃者を退治すべく共同で動き
始めていたのだ。
「行動開始よ。まずは襲撃者の痕跡調べね」
「てーかよー、誰か狩りの最中ってことでオトリになって、ノコノコ
出てきたところをとっ捕まえりゃ早いんじゃねえの? なんなら俺が
オトリ役、引き受けてやってもいいぜ」
ここぞと、自身を指差すゴドー。自ら改修した〈ガッツ〉の能力を
試したくて仕方ないのだ。
「敵が、どんなゾイドで襲ってきたかも調べずにわざわざ襲われたい
? 商売ガタキが減る分には私は構わないけど?」
冷ややかに告げるジェリー。狩りの前には、相手について充分な下調べ
と対策を。同じくゾイドハンターである母親から受け継いだ、ジェリーに
とってのゾイドハンターとしての不文律である。
ゴドーの不満をよそに、まずは襲われた残骸の下調べを開始する一行。
同行したゴドーは残骸の片付け役、アミーナは自機レドラーでの上空からの
哨戒役である。
「ったく毎度毎度地味くせえ…」
グチを垂れつつ、ストライクのディスペロウ〈マリアッチ〉の前に、
強襲され斃れたゾイドの残骸を持ち上げる。その、特徴的でもある
破壊痕を凝視するストライク。
「でっけえ“鋏”が無理やり喰いこんだ…ってところか」
「ダブルソーダみたいな、昆虫系の奴ってことかよ?」
「だがよ、それじゃあ…この“孔(あな)”が説明つかねえ」残骸と化した
ゾイド、その“鋏”の痕の他に、胴体に穿たれているふたつの焼け焦げた
黒い“孔”。「“鋏”に、孔二つか…だとすると」
「思い当たるのなんかあんの?」
「…あんまし想像したくない奴なんだが」
ストライクがそこまで呟いたときだった。
“襲撃”が来た。
轟――ッ! 一瞬の爆音、遥か高々空からせまってきた“それ”が、
いきなり低空を旋回していたアミーナのレドラーに踊りかかった。
「!?」
いつもの半分眠っているような飄々とした顔に、流石に驚きの表情を
浮かべるアミーナ。そのまま、白いレドラーを捉えた謎の黒い影、
レドラーを押さえ込んだままその機体を地面に押さえつける。
「きゃっ…」
「アミーナ!」
その場の一同の視線が、地面にレドラーを押さえ込んだ、黒い機体に
集中する。
こと驚きの表情を浮かべるストライク。右腕に、レドラーの機体を
挟み込んだ巨大な“鋏”エクスシザース。左腕に、まさにそのレドラーに
向けられている2本の槍マグネイズスピア。
背には邪悪な造形の翼と、ことさら相手にした者に畏怖感を与える邪鬼の
ごときマスク…、
「ロードゲイル…だと?」
その、邪悪なる名称を呟くストライク。
「ついに…見つけたぞ」
その黒い機体――ロードゲイルから漏れる、まだ若い感じのパイロットの
声。
「白いレドラーに乗るハンター、その機体から降りてもらおうか」
「え?」
「その機体は、我々のものだ」
「コラ待てや手前ェッ! なに勝手ほざいてやがる!」
怒りをあらわに、ロードゲイルの前に立つゴドーの〈ガッツ〉。
「そいつぁ俺が狩りで捕まえたゾイドなんだ! つまり所有者は俺だぞ俺
! 所有者に断りなく勝手に話進めんじゃねえよ! それから――」堂々
と、真正面から、声を落とし言い放つ。「アミーナを、放しやがれ…
いつまでも女ァ無理矢理押さえつけてんじゃねえよ」
「――レドラーに乗る女、返答は?」
「って無視してんじゃねえよコラァ!」
その、ゴドーの声に応じもしないロードゲイル。そして、
「駄目」コクピットの中、怯えた様子もなく、ぽつり、と告げるアミーナ。
正面のコンソールパネルを、機体をあやすように撫でる。「だってこの子
…ゴドーのであり私のでもあるんだもん。つまりゴドーと私の子」
「どういう表現よ…」
ゴドーの乗る〈ガッツ〉に、冷ややかな横目を向けるジェリー。だが、
ロードゲイルもそこで〈ガッツ〉のほうに視線を向ける。
「――所有者が黙れば文句はあるまい」
「――ッ!?」
一瞬の殺意。反射的に、双方向ブースターを逆噴射させるゴドー。
ゴッ…、刹那、〈ガッツ〉の胸部装甲を、ロードゲイルの槍の穂先が
引っ掻く。瞬時に飛び出したロードゲイルが、マグネイズスピアを高速で
揮い〈ガッツ〉を貫こうとしたのだ。
後方に跳んだ〈ガッツ〉の足が地面を抉り、着地する。
「上等ォッ!」
「待てゴドー、奴に手を出すな!」
ストライクの制止も耳に入らず、ロードゲイルに挑みかかる〈ガッツ〉。
だが一瞬早く、上空へと飛翔するロードゲイル。上を振り仰いだ瞬間には、
もう一同を見下ろす遥か上空へと空中静止している。
「早えぇっ!?」
「空に向けて撃て! 早く!」
同行した、一家の若衆の乗る2機のスナイプマスターに支持を飛ばす
ストライク。だが、
「え――?」
一瞬、何が起きたか理解できないジェリー。まさに“瞬く間”に、
狙撃体勢にて並んだ2機のスナイプマスターの間に着地している
ロードゲイル。その右腕の“鋏”が、左腕の“槍”が、わずか一閃で
2機同時に仕留めて見せたのである。
「このぉーーーっ!」ジェリーがそう叫んだ刹那、既に、〈ライオット〉
のすぐ眼前に“出現”しているロードゲイル「なっ…!?」
バシッ…! マグネイズスピアの一閃が、〈ライオット〉の右側の前肢、
後肢を突き千切った。文字通り、突き出された槍が一直線に、正確に、
レオブレイズの機体の前後肢のジョイント部分を貫き破壊したのである。
「キャアアッ!」
「ジェリーッ!」
「お嬢ォッ――そういうことか、やられた!」
ストライクが呻く。レオブレイズ、スナイプマスターというスピードと
機動性のある機体を速攻で倒されたのだ。ゴドスにディスペロゥという
二人の機体では、ロードゲイルの神がかり的なスピードに追いつくことなど
出来ない。
元々大戦中、無人機であるキメラゾイドの統率機として生まれたのが
ロードゲイルである。戦力の大半を統率する機体として、そのスペックは
並みのパイロットでは乗りこなせない程のものだ。今、ゴドーとストライク
が相手にしているのは、間違いなくエース級の技量を持つパイロットと
言えた。
「では、白いレドラーの所有者、大人しくあの機体をこちらに渡して
もらおう」
「…どうしても欲しけりゃ、俺を片付けてから持ってきやがれ」
「そのつもりだ」
言うが早いか、瞬時にゴドーの視界から消えるロードゲイル。
「なに…うわッ!」
突然の真横からの衝撃に呻くゴドー。もちろん、一瞬の間に間を詰めて
きたロードゲイルである。マグネイズスピアを突き出されてきたものの、
増設された肩の装甲の曲面に槍の穂先が滑り、直接貫かれるのをなんとか
免れたのだ。一瞬跳ね飛ばされた〈ガッツ〉の足が、尾が地面を叩く。
弾かれざまに振り返り、鉄拳を繰り出す〈ガッツ〉。だがロードゲイル
の前には虚しく空を切る。
逆に、ロードゲイルの右腕のエクスシザースが、遂に〈ガッツ〉の胴体を
ひっ掴み、挟み込んでしまう。
「しまっ…」
「健闘だったな、ごてごてと悪趣味なゴドス」
ギリリ…と、エクスシザースの刃が捉えた〈ガッツ〉の装甲に喰いこんで
いく。
「手前ェ…どこの誰だ」
「冥土の土産だ。名前だけは名乗る」無感情に、簡潔に、自らの名をひと言
名乗る。「ハデス」
そして、捉えた〈ガッツ〉に向けて、ロードゲイルが槍を振り上げた…
瞬間、
「ゴドーを傷つけては、駄目」
アミーナが呟く。
地に伏せていた白いレドラーが、いつの間にかその身を起こしていた。
刹那、単なる装飾と思われていたその2本の黄金の角から、強烈な稲妻を
迸らせるレドラー。
「なに…?」
電撃の奔流、その思わぬ直撃を受けるロードゲイル。もちろん、こんな
出鱈目な攻撃装備など、元々レドラーには搭載されていないはずのもの
なのだ。衝撃に〈ガッツ〉が“鋏”の呪縛から逃れる。
「やってくれやがったじゃねえか!」
ゴドーの闘争本能が点火した。腰の双方向ブースターが火を噴き、機体を
爆発的にロードゲイルへと突進させる。もちろん、この突進力も、元々の
ゴドスというゾイドにはないはずのものだ。肩装甲に仕込まれた電磁
ブレイカーに、機体の動力から直結された高電圧が火花を散らす。
GAN! 突進からの衝撃、高電圧が破壊力に付加されたショルダー
タックルの一撃が、ロードゲイルの胸部装甲に亀裂を走らせた。
「ゴドーッ、退けェーッ!」
ストライクの叫び。機体を組み替え、格闘形態であるアルティメット
モードへとチェンジマイズした〈マリアッチ〉が、〈ガッツ〉の陰から
その2本の鋼鉄の角メタルクラッシャーホーンを突き出し突進してきたの
だ。対格差もあるが、この突進による単純な破壊力は〈ガッツ〉のもの
より遥かに上だ。勝利を確信するゴドーとストライク。
が――、
「……?」
目を見張る二人。
まさにロードゲイルに突進を仕掛けたその瞬間、突如空中から、1機の
重装甲ゾイドが間に割って入ったのである。しかも、その首元の重厚な
装甲から発されたEシールドが、信じられぬ堅強さで〈マリアッチ〉の
突進を防いでいたのだ。
「スティル…アーマー…」
呆然と、その重装甲ゾイド――ロードゲイルの兄弟機の名を呟く
ストライク。
「――大丈夫ですか、兄さま」
スティルアーマーのパイロット――ジェリーやアミーナとも、そう
年恰好の違わぬ少女が、ロードゲイルのパイロット、ハデスを呼ぶ。
「ヘルメス、か」
「離脱します」
と、スティルアーマーが背のソードレールキャノンを乱射してきた。
特に目標をつけずに撃ち放たれる砲弾が、次々と乾いた地面を破裂させ、
濛々たる土煙を上げる。
そして、視界が晴れたとき、もうロードゲイルとスティルアーマー、
2機の凶相たるゾイドの姿は何処にも見えなかった。
「騎士の“矛”と“盾”」
何かに気付いたのか、ストライクが呟く。
「〈デュケーンナイツ〉…あいつらが、何故…」
アミーナのレドラーに視線を向ける。土煙に汚れてもなお、優美さを
失わない白い機体は、ただ虚空に視線を向けていた。
★
夜になって寝倉である倉庫へと帰還するゴドーとアミーナ。その、ゴドー
の頭に巻かれた包帯を見て、ティータが詰め寄ってきた。
「どうしたのよその傷!?」
「なんでもねえよ。相手のゾイドにぶつかったとき、計器にアタマぶつけた
だけだ」
「お医者様には、見せたの――?」
「帰りがけに診療所寄って、一応消毒と包帯だけしてもらった。ったく
そこまでいらねえってのにアミーナの奴…」
「だってー、血、出てたし、ケガした時はお医者様のところに行くものだし」
何事もないように告げるアミーナ。「あ、骨とかに異常はなくてー、かすり
傷ってお医者様言ってた」
「――じゃあ、ケガは大したことないのね」
言うと、その兄の包帯を巻いた額に、三本の指でデコピン喰らわす
ティータ。うぎゃあ! と悲鳴を上げるゴドー。
「大したケガじゃないんなら、さっさとお夕飯食べちゃいな! ったく連絡
もなしに遅くなるんだから、せっかくのおかず冷めちゃったわよ。今チン
して暖めるから」
「てめーっ! 兄のキズを深く抉るようなマネしやがってこともなげに
してんじゃねーッ!」
「そんだけ元気なら明日も働けるでしょ! 〈ガッツ〉のムダな改造費に
また借金重ねたのはどこの誰だったかしらねー?」
「ちくしょーっ! やっぱあいつ鬼だ…俺はきっと、赤ン坊のときこの
鬼妹がいる家に引き取られた可愛そうなもらい子だったんだ…」
「やっぱりティータ、いい妹だー」
「お前の目ェやっぱりガラス玉かなんかなんだね。そーなんだね…」
しくしく泣いてるゴドーのそばで、にっこりと、アミーナは微笑んだ。
★
夜、フォッシルコロニー付近の岩山に、隠れ寄り添っている2機の
ゾイド。ロードゲイルとスティルアーマーである。そしてその機体を
降りている、パイロットである兄妹、ハデスとヘルメス。
ハデスの手が、乾いた音を立てて妹の頬を叩いた。
「余計な真似はするな」実の妹に向けてとは思えぬ口調で、鋭く告げる。
「あの白い機体を捕らえるのは我が役目。お前は言われたとおり、後方で
待機していればいい」
それだけ告げ、妹に背を向け機体へと歩き出す。
「…兄さま、私は…」
それでも、張られた頬を赤く染め、まっすぐ兄の背を見つめるヘルメス。
「私は――誇り高き騎士の、“盾”です」
「――好きにしろ」歩みを止めることなく、言い放つハデス。
「誇り高き騎士など、もう、どこにもいない」
あとがき
ライバルキャラ出ターーーッ! うわはずかしい(苦笑)。やっぱり
「ゾイド」のストーリーでは、元々共和国と帝国という二大勢力による
戦争モノというバックボーンを端的に表すためか、主人公と対になる
ライバルキャラが必要不可欠なようで…そういうことでついにライバル
登場であります。ああ、覚悟してたけど、やっぱり最初のシリーズの
レイヴンや「フューザーズ」のブレイドとキャラ被りまくりだよ…(泣)。
一応ともに妹がいるって設定したのは、キャラ対比の構造のための仕掛け…
のつもり。別に妹同士もゾイド乗って殺しあうなんて展開にはならないはず
ですのでその辺は期待しないでください。さも意味ありげなことを呟く
ストライクの兄貴は、やっぱりさも意味ありげなキャラとなりますので。
さて、ライバルの乗機として登場させたロードゲイル…てーかこういう
役割の機体でなきゃいかんよ(笑)。スティルアーマーの兄弟機というのは、
特にオフィシャルにある設定でなくてあくまで「荒鉄〜」世界内での話
ですが、商品を所持していられる方はご存知の通り、この2機って手足の
フレームとか共用金型によるパーツが結構多いんですよ。ペアを組んで
“矛”と“盾”ってイメージにも重なりますし、ぶっちゃけ商品の仕様と
デザインが物語のキャラ設定に反映されちゃったんですな。伊達に商品数と
発売年数は重ねていないというか、やはりゾイドってのはユーザーが
イロイロ想像を膨らませるという意味でもイイ商品であります。
…ちなみに、ストーリーを執筆した本日は実は上京してイベントに出る
予定だった日。あぁあ新潟県中越地震こんちくしょーっ! まあ、イジケて
ゲームやってるよりは、創作してた分有意義な1日だったかもと。
それではまた次回。
(2004.11.28 〜「CLANNAD」中)
豪雪地帯酒店・第二事業部はものをつくりたい
すべての人々を応援します。
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